子どもにゲーム依存の傾向が見られたら、対策をとる必要があります。なぜなら、ゲーム依存は「病気」として国際的に認定されているためです。正しい対策を行い、良い形での治療を進めましょう。この記事では、子どものゲーム依存への対策について解説します。
子どもがゲーム依存になってしまった場合、すぐに対策を考えなければなりません。
なぜなら、「ゲーム依存症は病気だから」です。
(※「https://www.who.int/news-room/q-a-detail/gaming-disorder」参照)
2018年9月、世界保健機関(WHO)は「ゲーム障害(Gaming disorder)」を国際疾病分類に追加しました。
その要件は以下の通りです。
(1)ゲームをする時間や頻度を自ら制御できない
(2)ゲームを最優先する
(3)問題が起きているのに続ける
などといった状態が12カ月以上続き、社会生活に重大な支障が出ている場合にゲーム障害と診断される可能性がある。
(※「https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45280950V20C19A5MM8000/」参照)
アルコール依存症やギャンブル依存症が自然と治ることは期待できない以上、ゲーム障害、すなわちゲーム依存症にも積極的な治療が必要です。
この記事では、子どもたちのゲーム依存症への有効な対策について解説します。
子どものゲーム依存への対策は必要か
そもそも、子どもがゲーム依存になったとして、対策は必要なのかという疑問もあるでしょう。
しかし、ゲーム依存は「ゲーム障害」とも称されるように、人生において大きなハンデとなります。
国立病院機構の久里浜医療(くりはまいりょう)センターの樋口(ひぐち)院長が、次のように説明しています。
ゲーム障害の患者さんの脳では、ゲームを見ると脳に異常な反応が見られます。
これは、アルコール依存やギャンブル障害の患者さんでも確認できる同様の異常反応です。
脳に異常な反応が起こると、「ゲームをしたい」「遊びたい」などの衝動的な欲求に襲われ、ますます依存状態から抜け出せなくなります。
(中略)
とくに未成年者では、前頭前野の働きが十分に発達していないため、ゲーム障害が起こりやすく、将来にわたって影響が続く可能性があると考えられています。
(※「やめられない怖い依存症!脳に異常が起きるゲーム障害の症状、治療法 – NHK」参照)
このように、子どもは特にゲーム依存によって「脳の健やかな成長が阻害される」「将来まで大きく影響する」ため、速やかな対策が必要なのです。
とりわけ、小学生のような小さい子どもがいるご家庭は、ゲーム依存症の対策に積極的であるべきでしょう。
脳が未成熟であるほど、上記の引用で示された通りにゲーム障害が起こりやすいと考えられるためです。
では、具体的にはどのようにすればいいのでしょうか。
子どもがゲーム依存になってしまったら、すぐに病院に連れていくべきなのでしょうか。
その答えは、子どものゲームへの依存がどの段階にあるかによって変わってくるでしょう。
まだ兆候もないのにお医者さんに見せたとしても、有効な手立てが打てるとは考えづらいです。
むしろ、保護者への不信感だけが募り、他の悪い結果を招いてしまうことにもなりかねません。
具体的な対策を立てるためには、子どもがどういう状態にあるかを把握することが重要です。
子どものゲーム依存への具体的な対策を状況別に見る
子どもがすでに明確にゲーム依存の状態にあるのか、それとも兆候を見せ始めた段階なのか、あるいはまだ大きな問題は見られないのか。
ゲームに依存する深刻度によって、周囲が取るべき対応は変わってきます。
例えば、まだ何も起きないのにゲームそのものを悪と見立てれば、子どもは親に反抗心を抱くでしょう。
自分が好きなもの、好きであろうとしたものを否定されることは、人間の自我と尊厳を傷つける行為です。
子どもは独立したひとりの人間であることを認めつつ、良好な形でのゲーム依存対策を構築してくことが必要です。
以下に、子どもがゲームに依存している度合いに応じて、3つのパターンを用意しました。
すなわち、「予防」「対策」「障害治療」の見地に立っての場合分けとなります。
子どもはまだゲーム依存ではないが、ゲームに興味を示している場合
良好な状態です。あまり周りが心配しすぎるほうが、「過保護」になってしまう可能性もあります。
この段階で行うべきは、子どもの権利を害しない範囲での「予防」でしょう。
ゲームの存在を知らない間は、それに触れさせないことが重要です。
親がスマートフォンで何かを操作していたら、子どもは興味を持ちます。子どもが幼ければ余計にです。
そういう意味で、親もまた自らがゲームにのめり込んでいないか気をつけなければならないでしょう。
また、ゲームを始めていたならば、1日のプレイ時間や遊ぶ時間帯、ゲームを起動する場所を決めるのも効果的です。
これらのルール設定においては一方的に押し付けたりせず、子どもの気持ちもしっかりと聞きましょう。
親が強引に抑圧することは、いつか決定的な破綻を招きかねません。
子どもがゲームにのめり込み始めており、生活の他のことがおろそかになっている場合
子どもがゲーム依存の初期段階にある場合、より抜本的な対策を取る必要が出てきます。
この状況においては、話し合いで決めた内容が守られないことが増え、スマートフォンやゲーム機の機能で制限を試みても上手くいかないでしょう。
それでも、いきなりスマートフォンやゲーム機を取り上げるのは危険です。
信頼関係が断絶してしまっては、元も子もありません。
スマートフォンやタブレットなどの機器は、親が子どもを信頼して貸し与えているのだという意識を与え、課金などを行う際にはその限度額を定め、必ず無駄遣いしないことを言い含めましょう。
ルールを子どもとの間で決めたのなら、破った時の罰を約束として盛り込んでおきましょう。
また、保護者は子どもがゲームをする理由について知っておくべきです。
子どもがなぜゲームにのめり込むのかというと、日常よりもゲームのほうが楽しいからです。
親や周囲の人間がつまらないことしか言わない、楽しみを何も提供してくれないのであれば、常に自分の存在を肯定してくれるゲーム世界が魅力的に思えるのも仕方ありません。
そういう意味において、子どもに「ゲーム以外のもっと楽しい選択肢」を提示してあげられれば、健康的かつ平和的な形で依存状態からの脱却を図れます。
子どもの「見える世界」を広げてあげられるようにアクションを起こしつつ、子どもがしていることを頭ごなしに否定せずに、物事を進めていきましょう。
いくつかの手立てが効果を挙げられなかった場合、子どものゲーム依存の対策に詳しい病院で診断を受けてもらうことは、有効な選択肢になってきます。
ゲーム依存が疑われ、専門の医療機関を受診したとしても、「1回の治療ですぐ治るわけではなく、ゲーム依存の治療は1人に対して長い時間がかかる」ということをまずは知っておきたい。
(※「我が子のゲーム依存防ぐルール作り 5つの必須条件 – 日経Gooday 30+」参照)
ゲーム依存症もまた病気であり、脳に影響を与えるものであることは、すでに述べた通りです。
もしも生活に影響を及ぼし始めていたら、じっくりと「新しい楽しみ」を見つけられるように、保護者が親身になって子どもの治療に協力してあげましょう。
子どもがすでに1日の大半をゲームに費やし、親や周囲の言葉にも耳を貸さない場合
大変危険な状態です。
ゲーム依存が「ゲーム障害」という異常な状態であることは述べた通りですが、WHOの新分類では広義の精神疾患のひとつにカテゴライズされています。
精神障害は「心の病」とも表現されますが、神経伝達物質に代表される脳内物質の過小分泌や過大分泌が原因とする説があります。
内面の心の動きが、医学的に正常でない物質の働きによって説明されるわけですね。
シナプスの間の隙間では、電気信号で送られてきた情報の量に応じて神経伝達物質がこの隙間に送り出され、次の神経の受け取る側に渡されることで、情報が伝わっていきます。
このとき電気信号が神経伝達物質に変わることで、情報の信号を強めたり、さらに情報が細かく分かれて伝わるはたらきが生じるのです。
うつ病のときには、この神経伝達物質に異変が起きていると考えられています。
(※「うつ病が発症するしくみ – utsu.net」参照)
上記の引用はうつ病に関する説明ですが、人間の意欲のメカニズムを説明した部分になります。
ゲーム依存とは、この神経伝達がゲームに関してのみ正常または過剰に働き、他のことに対する反応が萎縮しているとも考えられるわけです。
すなわち、広義の病によって、本来できる活動が不可能になってしまっているのです。
先に引用した部分でも、子どものゲーム依存は、とりわけ脳への影響が大きいために対策が必要とありました。
早期にゲームという「刺激の塊」に触れ続けることで、脳内物質の調整システムが正常に成長しない「障害」が発生する恐れがあります。
これがゲーム依存であり、ゲームに人生を支配されている状態になります。
そうなると、本人が望むと望まざるとにかかわらず、「ゲームがそこにないと落ち着かない」「ゲームがプレイできないとイライラする」症状を引き起こします。
(※「ネット・ゲーム依存と回復ステップ – MIRA-i」参照)
これらは他の依存症の離脱症状に類似しています。
早期離脱症状は飲酒を止めて数時間すると出現し、手や全身の震え、発汗(特に寝汗)、不眠、吐き気、嘔吐、血圧の上昇、不整脈、イライラ感、集中力の低下、幻覚(虫の幻など)、幻聴などがみられます。
(※「アルコール依存症の症状 – アルコール依存症治療ナビ.jp」参照)
ここまで来ると、本人の意志のみで克服するのは困難を伴います。
まずは本人が決して正常な状態ではなく、厄介な疾患をわずらっていることを理解させましょう。
その上で、保護者を含めた家族や医療機関が一体となって、長期的な治療を行う選択肢を検討すべきです。
ゲーム依存については、「この薬を飲めば必ず治る」「こうしたプログラムを実施すれば完全に治癒する」といった確実な治療法は存在しません。
子どもともなれば、脳の成長がいびつになった弊害は計り知れないでしょう。
本人、保護者、医師がしっかりタッグを組み、治療に向けた取り組みをひとつまたひとつと積み重ねていくことが大切です。
その過程で互いによく会話して、それぞれの希望や苦しみを分かち合います。決して相手を拒絶してはいけません。現実世界が温かく受け入れてくれることを示しましょう。
子どものゲーム依存への対策まとめ
☆ 子どもがゲーム依存になった場合、速やかに対策を取ることが重要である。
☆ 子どものゲーム依存への対策は、子ども本人と話し合っての予防から始められる。
☆ 子どものゲーム依存が進んでしまった場合、それが精神疾患、病であることを自覚させ、専門の医者による診断を促す。
本記事の要旨は上記の通りとなります。
ゲームというものは、絶対的な悪ではありません。
適度な範囲での遊戯を心がければ、娯楽に触れることによる知的欲求を満たす機会にもなります。
あれもダメこれもダメでは、また違った悪影響が子どもに現れるでしょう。
日頃から子どもに向き合い、その好奇心が自然かつ健康な形で満たされるようにするのは、ぜひ前向きに考えるべき選択肢であると言えます。
日常が楽しいことこそが、子どもにとっては大変喜ばしいことでしょうから。
結果として、子どもをゲーム依存から守る良好な対策になりえるのです。
【参考ページ】
Gaming disorder – World Health Organization
ゲーム依存は病気 WHO、国際疾病の新基準 – 日本経済新聞
やめられない怖い依存症!脳に異常が起きるゲーム障害の症状、治療法 – NHK
最近のコメント